日本は食糧危機
日本の食料自給率は38パーセントと言われているが、実情はもっと深刻である。例えば野菜で考えると分かり易い。野菜は自給率80パーセントと言われるが、野菜の種は9割が海外からの輸入であり、国内生産はわずかに8パーセントである。さらに化学肥料の原料は、ほぼ全てを輸入に頼っている。種も止まり、肥料も止まれば野菜の自給率は限りなくゼロに近くなる。
一方、ロシアによるウクライナ侵攻は、食糧を巡る問題をさらに悪化させている。ロシアとウクライナは小麦の一大生産地である。欧米諸国がロシアに対する制裁を強める中、ロシアは輸出規制で揺さぶりをかけてきており、一方、ウクライナでも、戦争の影響で農業生産者が種や肥料を買えず、収穫減少が避けられない状況にある。日本は小麦を主にアメリカ、カナダ、オーストラリアから買っているが、これらの国には、世界中から買い注文が殺到しており、日本が買い負ける可能性が、かなり高い。まさに日本は、今、食糧安全保障の危機の中にあるのである。
ところが、日本のテレビは、テレビが日本文化のすべてを代表しているわけではないが、テレビに現れる日本人の問題意識のなさには呆れる。それはつまりテレビ制作者の姿勢が、視聴者をなめているとしか思えない内容が多くなっている。食糧安全保障の危機が、すぐ目の前にあるという認識がないのか、どの番組を見ても食べ物の話ばかりなのである。
テレビなどの機能では、食物の味や匂いは伝わらない。スタジオに食べ物を持ち込み、女子アナが試食しては「うーん、おいしい」と言いながら頭を振って見せる。何にでも、すぐオウム返しに聞き直して驚いて見せる。女子アナたちは、やたら大声を出して笑い、マイクを持って走り回る。大の大人がそんなに大げさに喜んで見せるほどのことは、人生には、ほとんどない。日本人が一斉に幼児化したのか、それとも食糧問題の深刻化に気が付かないのか、どっちかなのだろう。
食糧を生産しているのは農業者が主だ。その農業者になろうとする若者が、ほぼゼロに近いという深刻な状況を分かっているなら、農業に関わっている者から言わせてもらえば、テレビでの食糧を弄ぶ様な番組は、やめてもらいたいと思う。農業従事者は、労働の過酷さに比較して、他の職業に比べて全てにおいて恵まれているわけではない。