日本の国柄は世界一
「日本は遅れている」との上から目線の非難がある。日本は海外と比較して、遅れているから変らなければならないと続くのが通例だ。海外の僅かな事例を引きながら日本を貶める。こうした論法は、卑劣と言わざるを得ない。なぜなら自身に都合の良い事例だけを取り上げるからだ。それに同調する勢力が、国内にあるのも腹立たしい限りだ。
欧米の価値観と我が国の価値観は全く違う。例えば、五世紀から十五世紀までの中世を見てみると、アメリカは歴史の舞台に存在しないに等しい。ヨーロッパは王侯間の抗争が続いていて「蛮族」の集まりのようであった。 一方、日本は当時すでに、十分に洗練された文化を持っていて、文化的洗練度の指標たる文学を見ても、万葉集、古今集、枕草子、源氏物語、新古今集、方丈記、徒然草・・・ときりがない。この十世紀のおける文学作品を比べてみても、全ヨーロッパが生んだ文学作品より、日本一国が生んだ文学作品の方が、質及び量の両面の上で、はるかに勝ってたのは確かなことである。
これ等からもわかる通り日本の基礎学力は、江戸初期のころから、つい20年ほど前まで、ほぼ四世紀に渡って、世界でダントツであったと言われている。これは識字率の圧倒的高さとか、江戸初期に出た「塵劫記」という算数の本が江戸時代を通して大ベストセラーだったことからもうかがえる。道徳心も他国とは比較にならないほど高かったし、独創性も文学や数学などに見られるように高かった。西洋に写実主義しかなかった時代に、葛飾北斎や安藤広重などは、波の間から富士山が見えたり、夕立を直線で描いたりというデフォルメした構図を生み出した。印象派を代表するゴッホやモネは感動し、自分達の作品に熱心に取り入れた。モネの自宅にはこれら浮世絵の作品が大量に展示されている。
日本の歴史を振り返ってみてみると、鎖国の後、明治になるといきなり近代化に乗り出して、世界最大の陸軍国ロシアに勝った。第二次世界大戦前には、世界最大の海軍国の一つになっていた。戦後は廃墟の中から立ち上がり、世界第二位の経済大国にのし上がった。世界最大の債権国でもある。この資源も何もない小さな島国が、なぜこれほどの実績を残してきたのか。これこそが日本人が持っていた「国柄」が優れていたからである。この国柄を作り上げたのが、「武士道精神」であったのだと思う。武士道は、多くの日本人の行動基準、道徳基準として機能してきた。この中には、慈愛、誠実、正義、勇気、惻隠、さらに名誉と恥の意識も含む。名誉は命より重い。この武士道精神が、長年、日本の道徳の中核をなしてきた。
「文明の衝突」を書いたアメリカのハンチントンは、世界の八大文明の一つとして日本文明を上げている。
先人の作り上げた日本文明の非常に優れた独自性を守り続けるのが、子孫である我々の第一の義務であると肝に銘じている。