食糧安全保障問題は深刻

大国,中国の最大の弱点は、食糧の自給ができないことである。中国は1990年以降の経済発展で、沿岸部の農地や耕作可能な土地を、大規模工業団地として開発してきた。2000年代に入り、政策を変更して、農地転用を厳格に制限する法律を作ったが、それでも農地は減り続け、十分な量の農産物を生産できていないのが現状だ。大国の定義を言うなら、大国とは戦争にかかわるすべての行為を、自力で賄うことができるという事であろう。食糧の自給で深刻な弱点がある中国は、大国とは呼べない。不動産不況やハイテク企業の人員整理などを受けて、現在の中国は若者の失業率が約20パーセントに達し、社会的不満がたまっている。
我が国も、食糧自給は全くの大問題だ。自給率37パーセントと言われ、台湾問題でも勃発したら、シーレーン封鎖になるだろうから、食糧が入ってこなくなり、国民は飢えに苦しむことになる。
今、なお続くロシアによるウクライナ侵攻は、食糧をめぐる問題をさらに悪化させている。我が国は小麦を主に米国、カナダ、オーストラリアから買っているが、これらの国には、世界中から買い注文が殺到していて、「食糧争奪戦」の様相を呈している。従って、いずれ手に入らなくなることを覚悟しておかなければなるまい。しかもさらに深刻なのは、食糧そのものだけでなく、農作物を作るための肥料も深刻な状態になっている。
日本は化学肥料の原料となる、リン、カリウムについては、ほぼ100パーセント輸入に頼っているし、尿素についても約96パーセントが輸入だ。リンと尿素は、これまで中国から輸入してきていたのが、中国では、国内需要の増加に対応して、こうした原料の輸出規制を始めている。またカリウム原料の多くをロシア、ベラルーシに頼ってきていたのが、ウクライナ戦争の影響で、「敵国」日本への輸出規制を行ってきている。
化学肥料が手に入らなくなると、農作物の生産に大きな支障をきたすことは明白な事実である。
このような食糧危機時には、各国の思惑により、食糧輸出が操作されてしまう。それに対応するためには、安全保障の観点から食糧の確保を考えなければならないが、岸田政府はそうした危機に全く対応できていないように思う。戦後の政府の基本的な方針は、「農業を犠牲にしても、自動車などの輸出を増やしていけばいい」というもので、財政政策の基本も、農業予算を切っていくものだった。加えて、農業自体が縮小し、政治家も農業を軽視してきたことが重なって、農政全体の「ゆがみ」が、日本の食料問題の根幹にある。「農家は補助金漬け」という意見があるが、それは虚構だと思う。EUの農業所得に占める補助金の割合は、イギリス、フランスで90パーセント以上、スイスでは、ほぼ100パーセントであり30パーセントの日本は先進国の中でも低いほうである。一定程度の食料自給率を維持していくためには「国による支援」は絶対に必要だ。
米の価格が低いのが問題になっているが、米は一俵作るためには、最低でも1万2000円のコストがかる。しかるにJAや経済連の買い取り価格は9000円程度である。その差額を国が補填した場合、主食米700万トン全量補填しても3500億円程度にしかならない。国の予算全体を考えても小さな額だ。安定した食糧供給は安全保障の根幹である。農家が、安定して作物を生産できる環境を、早急に作らねばならない。食糧安全保障のため、農業政策を抜本的に変更するべきではないかと思う。

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