国会議員の世襲

首相公邸内での不適切な行動が批判された長男の翔大郎首相秘書官について、岸田首相はようやく更迭した。厳重注意にとどめていた首相が一転して更迭を決めたのは、世論や与野党からの批判の高まりを受けてのことだろうと推測する。こうした世論を気にした結果の優柔不断さと受け取れるような対応は、政治家としては失格である。特に身内に甘いという印象は国民の軽蔑を招く。本来であれば、身内にはさらに厳しくあるべきだ。
この種の問題は、政治家の世襲に原因がある。日本は政治家の世襲大国である。欧米諸国では世襲政治家はゼロだ。従って、日本の状態は世界的に見て異常であると言えよう。世襲が問題なのは、福沢諭吉に言わせれば、生まれながら貴賤上下の差別を生むという事になる。世襲とは格差をつくる。言うなれば不平等、不公平な社会の象徴でもあると言えよう。さらに重要なのは、政治家としての能力に問題がある。日本は戦争に敗れたが、歴史が証明するように、戦前は軍事力も政治力も一流であった。しかしながら、最近の日本政治はとても世界で一流の政治家がと思える人はいなくなった。世襲によって、無能で、ひ弱で度胸も勇気もない世襲政治家が増えたからである。
徒手空拳で身を起こした田中角栄や、帝国海軍将校だった中曽根康弘は、欧米の政治家に決して引けを取らなかった。田中角栄は毛沢東や周恩来と五分に渡り合い、中曽根康弘はサッチャーを押しのけてレーガンの隣に立とうとした。学歴を重視すると問題にする人もあるとは思うが、世界のトップリーダーは、ハーバート、オックスフオードなど、世界大学ランキングのトップクラスの大学を卒業し、何ヶ国語も話すスーパーエリートである。日本の政治家は、世界大学ランキング圏外の人がほとんどである。世界ランキングを盲信するのではないが、少なくとも、学歴は人間の知性を図る有力な指標である。念のために学歴を定義すると、「学歴とは、その人が長年かけて修めてきた学問の歴史のことであり、世界的に通用する知性であり教養である」とある。世襲議員の多くは恵まれた環境の中で育ち、ろくに勉強もせずに漫然と大学を卒業しているのは学歴とは言わない。大学がすべてではないのは言うまでもないが、少なくとも、人間の知性を証明する有力な指針であることは事実である。
日本の国際的な地位はじわじわと地盤沈下している。田中角栄や中曽根康弘氏のころは、日本の政治外交は強力だった。世襲議員が多くなった現在は、アメリカの属国の様に体たらくになってしまった。国際的な地位は低下し、存在感は薄まるばかりである。世襲政治家の増加は日本を滅ぼす元凶になるかも知れない。

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