農協が農業の衰退の原因
農地の荒廃、農業従事者の減少、収入の不安定等々、国の柱である農業を発展させることを目的に作られた農協の実態は、当初の目的を大きく離れてしまって、農業者の利益を上げるという組織でなくなってしまっている。
1947年農業協同組合法は、第一条で、その目的を「農業者の共同組織の発達を促進することにより、農業生産力の増進および農業者の経済的社会的地位の向上を図る」と定めているが、現状は農業者のためには全く寄与していない。
確かに戦前、農村や農業は貧しかった。収穫したコメの半分近くを、地主に小作料として納めさせられる小作人が多かった。終戦直後、農地改革により小作人の開放を推進した農政が、「農業者の経済的社会的地位の向上」を掲げ、農業者自身が協同して助け合いながら推進するために農協組織を立ち上げたものだが、その目的が捻じ曲げられている。
農協の実態は合併を猛烈な勢いで進め、過去、身近で農業の推進に何かと指導してくれていた農協は、なくなってしまった。農業生産力の増進などという目的も達成されることはないし、そんなことを考える農協でもなくなってしまっている。
農協は、預金量が国内第2位のメガバンクであり、保険事業も業界トップの座を伺うまでになっていると聞く。農業が衰退するにもかかわらず、農協は大きく発展した。農協の発展という手段が達成され、それが目的としたはずの農業の発展は、実現しないままというのが現実である。今の農協は協同組合なのかという根本の議論を徹底して行う必要がある。農協は農家が安く肥料を買うために作られたという分かり易い目的がある。しかしながら、驚くべきは農家が買う肥料の値段はスーパーなどから買ったほうが安い。農機具もそうだ。複数の農家が団体で肥料会社に直接取引を要求したら、農協を通してくれと断られた。裏に農協の圧力があったのだろうと当事者が憤慨していた。そうなると農協は農家の利益を守る団体ではない。農協の役割を抜本的に見直さないと農家が困る状態にある。農協は、農家や農業者を組合員とする職能組合であり、それの利益を確保するために作られたものである。それが農家の利益を損なう組織になってしまっている。
一方、日本の食料安全保障は危機的な状況にあるにもかかわらず、農協の姿は全く感じられない。日本の食料自給率は1965年で73パーセント。2021年は38パーセントまで落ち込んできている。
外国の例を見てみると、カナダ、233パーセント。フランス、131パーセント。アメリカ、121パーセント。ドイツ、84パーセントとなっている。
ロシアのウクライナ侵略や気候変動で食糧事情は急激に悪化している。最早、急を要する状態になってきている。農協は本来の目的を達するために早急に姿勢を正すべきではないのかと思う。