大平正芳という政治家
訪米した野田佳彦首相はオバマ大統領とホワイトハウスで会談し、共同記者会見して日米同盟を発表したが、オバマ大統領がどの程度信用してくれているかは心許ない。
いつだったか米国政府高官は、民主党政権に対し真の軽蔑を感じていると言っていたのを思い出す。 米国保守系シンクタンク 「ヘリテージ財団」 のブルース・クリングナー上級員も 「日本はアジアでも無意味となりかねない。 日本は国際的に影響力や存在意義を縮小させており、このままだと、アジアでも二線級の中級国家になってしまう」 と強く警告を発しているのである。 案の定共同声明に 「同盟深化」 の文字が入らなかった。 日米同盟を揺るがしている民主党政権の無定見、非力さ、そして愛国心のなさが、今日の日米同盟の危機を呼び込んでいるのである。
かって名外相と云われた大平正芳元首相は、当時、外相の心得として 「私は日米間に塵ほどの不信の種を蒔くこともないよう、周到な配慮を心掛けた」 と言っていた。 自己正当化はあったかもしれないが、こう云いきれる事は大事だろう。 特に普天間問題を巡る民主党政権の迷走を見れば、その思いは一層痛切である。
大平正芳は、 「権力はそれが奉仕する目的に必要な限り、その存在が許される」、とか 「謙虚な政治」 とか、若い時にはよく言っていたそうである。 大平氏を思い出すたびに我々の胸中にほのぼのとよみがえるものがある。 野田首相は少なくとも、鳩山、菅という前任者と比べて、はるかに大平に近い政治家であると思う。
しかしながら、その野田首相にしても、一回失った信頼を回復するのは並大抵ではない。 私は断じて違うが、多くの人が民主党政権を選んで国を危うくしてしまったのである。 そのツケは限りなく大きい。