水田があぶない
我々の土地改良組合で管理している水田の面積は、約100ヘクタールという膨大なものだ。 今週から水田に配水するために、ポンプを稼動させた。 早朝、水の流れる状況を調査して見ようと思い、いつもの散歩コースを変えて、水田と水田の間を縦横に走る農道を歩くことにした。
汲み上げられた水は用水路を勢いよく流れ、あっという間に一面の水田を満たして白く光り、まるでそれぞれが自己主張しているように見える。 水がいっぱいに張った水田では、作業が順調に進んでいる。 稲田は昔さながらの整然とした水路と畦道とのコントラストが美しい。
問題は蓮根の水田である。 多くの蓮根農家は、政府の減反政策で米作りをやめて、蓮根へと転作したのであるが、蓮根の水田は美しい水田という形容には程遠い。
蓮根農家は年間を通して常時水を必要としている。そのために、土地改良組合で汲み上げる水だけでは不足する。 したがって、自家用の井戸をそれぞれが持っている。 その井戸から汲み上げた水圧の高い水で、蓮根を掘るために大量のヘドロが発生する。 そのヘドロが排水路を埋めてしまうのである。 殆どの排水路は素掘りなので、ヘドロの堆積で水が流れなくなる。 やがてヘドロが乾燥し雑草に覆われる。 雑草が繁茂しているエリアはポイ捨ての絶好の場所になってしまい、空き缶、ビニール屑、タイヤ等の山となってしまう。 水圧の高い水は、時としてはその勢いのために、畦道や農道を侵食してしまい、やがて道巾が狭くなりいつの間にか痕跡さえなくなってしまう。
さらに問題は揚水するためのポンプの維持管理の問題である。 ポンプの更新には数千万円の費用がかかる。 農家から集めている賦課金と称する維持費のみで、ポンプの更新はまず不可能であろう。 ポンプが使用不能になったら、100ヘクタールの水田は耕作不能になる。
このような実態を国や市は認識しているのだろうか。 国も市も口を開けば「農業は国の柱だ」と宣もう。
商業も大事だが、農業はもっと大事だ。 ポンプの更新や完璧で頑丈な農道の整備、水路のコンクリート化など、早急に整備しないと遠からず日本の水田はなくなってしまうかもしれない。