勝負を運で語るなかれ

本命といわれている巨人、ソフトバンクに赤信号がともり、フアンをやきもきさせている。勝負の世界は勝てば官軍であり、期待を裏切ったときの反発や非難の大きさはすごいものがある。原監督や工藤監督の表情が日ごとに険しくなるのも当然であろう。チームスポーツでは、勝てるという自信が過信に流され、心にスキができてくることがある。一人一人の心にわずかに宿ったスキが、とり返しのつかないミスになって現れ、チームが崩れていく。戦で組織が崩壊し、兵卒が敗走をはじめれば、リーダーに残された道は腹切りだけである。期待された女子サッカーの日本代表チームは、オリンピックで早々と敗退し、監督は責任を取って引退した。引退した監督の顔は、黙って苦しさに耐えて言い訳せずに、背筋をピンと立てて凛とした表情で去っていった姿が印象的であった。
スポーツには終わりがない。どんな逆境からも這い上がらなければならない。新しい作戦を練り、プレイヤー全員に理解、浸透を図り、練習し、ゲームで試して、チエックし修正する。毎年ごとに目標を高め、チャレンジを続けなければならないのが、チャンピオンスポーツを志す者の宿命である。
やり直しのきかない、この修羅場の戦いの中で、時々気になることがある。それは一軍のリーダーが、安易に運のなさ、ツキのなさを口にすることだ。プレイヤーを庇うための発言なのかは分からないが、チャンスに凡退し、ピンチにエラーが出るのは運ではなく、実力なのではなかろうか。あらゆるスポーツには理論がある。こうすれば点が取れる、こうすれば抑えられる、という理屈があるのだから、負けるという事は相手にできたことが、自分たちにはできなかったという証明である。運、不運でかたづける問題ではなく、自チームの練習計画、内容、心構え、コンデショニング、選手の起用、戦法の決定などに原因を求めるべきなのである。
私は勝負の場にあるものが軽々しく運、不運を口にすべきでないと思っている。