火事場のくそ力

各地から大雪のたよりが多い。 しかも雪の中で、火事が起きているニュースをたびたび見る。 当事者の不幸の二重奏を見ているようで、こちらも辛い。
「苦あれば楽あり」とか「禍福はあざなえる縄のごとし」とかいう、無責任な諺があるけれども、人生がそんな甘いものではないことは、70年以上も人間をやっていれば誰だって思い知らされている。
不幸は、いつだって纏めてやってくる。 よくは分らないが、幸福も団体でやってくるようだ。 だから相次ぐ不幸に見舞われても、「もう、これ以上は、悪くなるまい」なんて油断すると、どっこい本番はその後だったりする。 どうやら幸福の天井がないかわりに、不幸にも底がないらしい。 不幸もあまり重なると命に関わるが、最近の学説によると、生命の危ぶまれる寸前には、脳の中にアドレナリンとか、スーパー分泌液が放出されて、科学では証明できないような奇跡的な力をもたらすそうだ。
いわゆる「火事場のクソ力」というやつである。 子供のころの話であるが、近所で火事があった。 その家の80歳をとうに超えたと思われる、腰の曲がった体の小さな老人が、水をいっぱいに張った樽を抱えて、走り回っていたのを時々思い出す。 それを見て仰天したものだ。 したがって、私は、万一の時は、そうゆうことがあるからと、なんとなく安心しているのである。
いまだかって、アドレナリンの恩恵に浴した事がないところを見ると、私もまだ苦労が足りないのであろう、と反省をしている今日この頃である。