上海の現状は

上海には、今や世界中の経済人の関心が集中しているのが分かる。長い間、分厚い土の下で眠っていたエネルギーが、一挙に地上に噴出して、過去の失われた時間を取り戻す勢いで新しい栄光の時代を創出しつつある。いったん眠りから覚めれば、何しろ国土は広大だし、人口は日本の十倍である。GDPの伸び率も毎年二桁近い。何しろすさまじい勢いである。
そんな中、尖閣諸島付近で今月七日に中国漁船と海上保安庁の巡視船の衝突事件が起きた。ここ数年、日中関係は極めて良好な雰囲気で来ていたが、これで一気に対立が深まった。中国のインターネット上では日本批判の書き込みが急増しているらしい。「円高誘導」や「尖閣諸島付近での軍事演習」など、日本への報復措置を具体的に提案する学者もいるようだ。すでに、中国企業による一万人規模の訪日団体旅行中止、閣僚級以上の交流停止、日中長期貿易協議委員会の延期などを打ち出している。そもそも尖閣衝突事件は、中国漁船が日本固有の領土である尖閣諸島付近で操業していたのを、海上保安庁の巡視船が見つけ、退去を警告したのに対して逃走を企て、尚、停船を命じたのを無視し、海上保安庁の巡視船に衝突を繰り返しさらに逃走しようとしたものである。明らかに非は、一方的に中国漁船にあるのは明らかなのにである。
そういえば、上海滞在中にバイクと歩行者が衝突事件を起こしていたのを目撃した。どちらも相手側を一方的に批判して一歩も引かない。後日談であるが、話は食事時間や、トイレや風呂に入ったあとも現場に戻ってきて、延々と果てしなく続いたそうだ。中国では、たとえ自分のほうが明らかに悪い事でも、絶対に認めない習慣だということらしい。世界に通じる上海になるには、世界に認められる常識が必要だろうと思う。
いずれにしろ上海の発展は、中国の発展の象徴といっていいのだろうが、都市の再開発がものすごいスピードで進む。それは土地が殆どすべて国家の所有であることが理由であろう。役所が再開発を決定すれば、人が住んでいようが、有無を言わせず立ち退き命令が出て、旬日のうちに建物が壊され、あっという間に更地になってしまう。日本のように、新宿のど真ん中で、ホームレスが段ボールの中に屯しているのを立ち退かせるのでさえ、社会主義者やマスコミの顔色を伺いながらでなければ、ことが運ばないというのとは大違いだ。しかしながら懸念されるのは、こんなふうに急速な経済発展が進めば、うわべの華々しさの裏側に、様々なゆがみが生じることは想像に難くない。陽光に輝くきらびやかな超高層ビルが、長く大きな影を地上に落としているように、繁栄を創り出す影の中には、得体の知れないものが蠢いているような気がしてならない。尖閣諸島の問題も解決を図るためには、得体の知れない連中との困難な交渉が続くことを覚悟しなければならないのであろう。やっかいな隣人ではある。しかし無視することもできない相手であることは確かだ。