上海万博のついでに〔2〕
現在の上海市は世界をリードする超近代都市といっていいだろうと思うが、郊外に古き良き時代の面影を色濃く残している朱家角〔しゅかかく〕という古い町があり、上海中心部から車で約一時間というので、そこを訪ねてみた。朱家角は、正真正銘の明、清時代の町と形容される宋の時代以来の歴史ある町で、当時の建物が川沿いにずらりと並び「街三里、店舗千個」と称される。まるで東京のアメ横を思わせるような雰囲気だ。一間幅ぐらいの石畳の通路を挟んで、間口もせいぜい二間ぐらいの店がギッシリと並ぶ。ごった返すほど大勢の観光客に、威勢のいい客寄せの声が間断なく飛び交う。思わず何か買ってしまいたくなるような気分になる。街の真ん中を流れる川は、幅がおよそ50~60メートルは優にあるかと思われ水量は多い。川の源は太湖という説明があった。太湖から無錫や湖州などを経由し、いくつかの川が合流しているために水量が多いのだろうと思われ、水量が多いためにゆったりと流れてい感じだ。その川には風情に富んだ古色蒼然たる橋が36ヶ所も残っており、その中のひとつ放生橋は1571年、明朝の時代に建造され、五つのアーチを持つ石造りの太鼓橋で、緩やかな石段が続く橋の下を渡り舟や観光客を載せた遊覧船が往来している。
古くからある小さな田舎町を中国では「古鎮」〔こちん〕と呼ぶ。近年、長江下流域の水郷地帯に残る明、清時代の建築物や運河の街並みは、「江南水郷古鎮」と称され、観光スポットとして脚光を浴びている。家屋は平屋または2階建てで、レンガ積みの壁を漆喰で塗り固め、屋根は小さな黒い瓦がきれいに葺かれ、水路を行き交う小船の影と白壁の家は、まるで水墨画のような雰囲気を醸し出している。行政と家屋の持ち主が知恵を出し合ったのだと思うが、川沿いの民家が川に面したところを多分、改造したのであろうと思うが、床にテーブルを並べ料理や飲み物を出して客を楽しませている。どこの 店も大入り満員の状況だ。料理は豆腐、川えび、田うなぎ、たけのこ、白っぽい色をした淡水魚等である。
上海から車で約3時間弱で杭州へ着く。西湖がある。西湖は完璧に整備されていて、湖の周りを一周してみたがうっそうとした森はよく手入れされており、街路樹のポプラは何百年経っているのか見当もつかないほどの大木だ。ほとりに有名な婁大婁がある。周恩来がニクソン大統領と歴史的な会見を行ったところである。そこで夕食をとったあと、「西湖」の湖上で景観を生かした壮大なショー「印象西湖」を見物した。中国映画の巨匠、北京オリンピック開幕式の監督である張芸謀〔ジャンイーモー〕氏演出、日本の喜多郎氏が音楽担当で繰り広げられる演技は観るものを圧倒する。湖の中に設置された舞台で数百人の役者による踊りや、降り注ぐ水と光の演出は見るものを魅了する。さらに中国江南地方の四季折々の自然風景が演出により彩を添えて、夢幻の世界が繰り広げられる。杭州の夜を楽しむ旅行者のアトラクションになって定着している。観客席は5000人分の収縮式雛壇形で、夜になるとセットされ入場料が3000円、入場者数が5000人で365日開催、年中満席とのことである。大勢の観光客の誘致と、莫大な売り上げで杭州市や市民に大きな利益をもたらしているようだ。
霞ヶ浦でやれないものかと、しきりに考えながら帰国の途に着いた。