世代交代を
今年も8月15日がやってきた。 終 戦の年は小学校に入学した年だ。 何があったのか、どんな周囲の状況だったのか、ほとんど覚えていない。 「あの夏の青空に、私たちは、戦前という忘れ物をした」と語ったのは、作家の久世光彦さんである。
私の記憶にあるのは、戦争とは全く関係のないことばかりで、懐かしい家の匂いや、靴下を繕う母親の姿や、一緒に遊んだ大勢の幼友達の面影ばかりである。 大勢の友達と言えば、どこの家でも兄弟姉妹が多く、飯時の奪い合いがいつも泥沼戦争の様相を呈していたものだ。
そんな我々も、高齢者の仲間入りをすることになったのだが、少子高齢化の時代に突入して、労働人口の減少傾向が急速に進んでいる。 独立行政法人の試算によると、国内の就業者数は平成26年から42年(2030)までの16年間に787万人が減少する。 年間にして49万人。社員100人規模の企業が毎年5千社ずつ消え続けて行く計算になる。元気な高齢者には働き続けてもらわなければ、人口減社会を乗り切れない。 問題は「企業活力研究所」が24年にまとめたシニア人材の活用についての報告書の中身だ。 職場のシニア世代に対する20~40代の若手・中堅世代の不満が赤裸々につづられている。それによると「過去の栄光にこだわり、自分の若かった頃のやり方を通そうとする」 「我儘過ぎてついていけない」 「シニア同志の連係が悪い」 等々。 シニア社員の能力や意識の硬直化が、ストレスになっている若手・中堅は多い。 シニアと若手・中堅の摩擦が増えれば、職場全体の生産性が低下する。 ここは将来のある若手・中堅に、シニア世代が譲る気持ちを持つことが重要だろう。 シルクロードを自転車で走破した高齢者世代の友人が、よく口にする。、「未来で評価されるの人が若者、現在で評価される人が大人、過去で評価される人が老人」だ。 例え20歳で引退したスポーツ選手でも「老人」なのだそうだ。
一方、70歳過ぎても、若い人にタスキを渡さない人はやはり困った老人だと。 政財界・研究開発・マスコミ等、いたるところに増殖し、若者を阻害している日本人は、大人の国どころか、名実ともに老人超大国になってしまう。 高齢者と言われる世代は、本人が思っているほど評価されないのが現実なのだということを分かる必要がある。老兵は静かに去り、若い世代にタスキを渡そう。