魅力ある街とは

 街づくりについて、いろいろな参考例を引っ張り出して述べてきたが、一番重要な条件は、街と云うものは、その街に期待する文明とか、美と云うもの、つまりは秩序のことであろうと思う。
「日本一安全で安心な街」。 どこの市でもスローガンに掲げているようだ。 では具体的にどうゆう街がそうであるのか。 そこまで踏み込んで語っている市は、今のところお目にかかっていない。
私なりに「安心安全な街」とはを定義するとすれば、秩序ある街と云うことだと思う。 秩序ある街とは、最高の治安対策が感じられる街であり、文明美と云ったものが感じられる街であろうと思う。 秩序の感じられない街は、単なる娯楽場か、工事場か、人間の置き場にしかすぎない。 住む人にとっていささかも心を安らかにしてくれない。 
京都の街を歩くと、どんな裏通りを歩いていても、ごみ箱を軒下に出していない。 みな家の中にしまっている。 市の条例で決まっている訳ではなく、古い、さり気無い慣習であり、このさりげなさの中に他の街にない、市民の秩序感覚の厳しさを伺うことが出来る。 京都の街の秩序は油断して歩いていることを許さないような厳しさがある。 街路を歩きながら京都の街角は、常に訪問者に何かを教えようとしているような気がしてならない。 現代の文明や文化を京の街の人々は、その肩で担っているとしか思えないのである。 ひょっとすると、街の辻や飲み屋で、そうゆう人に出会うかも知れないという、ときめきを感じる事が度々ある。
外国の街で、同じような感覚を受けるとすればパリであろう。 夜のパリを歩いてみると、閉店した商店のショウウインドウに、明るい照明が入りウインド・ショッピングする人たちが足を止め、カフエのテラスには夜の服装に着替えたパリジエンヌや、昼の服装のままの旅行者が、おしゃべりをしたり、体を寄せ合ったりして、夜のパリを楽しんでいる。
コンコルド広場の街灯に、淡い灯りが入ると広場の中央のオペリクスの下の女神の像に支えられた噴水から、照明を浴びた水しぶきが夜空に向かって高く噴き上げられる。 その噴水が醸し出す美しさは格別で、よく考えてつくられたものだと深く感じ入る噴水だ。
京都には秩序に対する遠慮感覚があり、パリの美しさやよさはその秩序美にあり、それを維持している人々の感覚が共通である。 良い街とはそうゆうものがあってこそ、その名に値するものであろう。 魅力ある街づくりを進め、活性化を図ると本気で考えるなら、京都やパリと同じくらいの街をつくるという理想を持つべきであろう。  

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