荒れる山林

 近郷近在の山林の荒れているのが気になってしょうがない。 山林の木々が手入れされず放置されている状態は、安い外材に押されて採算に合わないからということが最大の理由のようである。 しかしながら、我々は重大なことを忘れているように思う。 
「あなたは川の水がなぜなくならないか、考えたことがあるだろうか」と、富山和子さんが「水の文化史」で読者に問いかけていたのを思い出す。 日本の川はライン川や黄河に比べてはるかに流域が短く、国土の傾斜が急であるから、雨が降っても水はたちまち海へ流れてしまいそうなものだが、現実にはそんなことはない。 晴れる日が何日続いても川の水が枯れることはない。 それは山に木があるからなのである。 森の木々と、落ち葉の堆積をした表土が、雨水を受け止めて蓄える。 そして地下へ浸透した水は時間をかけて再び地表へとしみ出てくる。 このゆるやかな過程があるからこそ、川はいつも川であり続けるのである。 木材を生産する森林のもう一つの働きである。 
森林は、このほかにも洪水や山崩れを防ぎ、スキー等のレジャーの場を提供するなど様々な効用がある。
全国には凡そ二千五百ヘクタールの森林があるそうだ。 その価値を大分以前に立正大学の福岡教授が計算したことがあったが、木材生産、水源涵養、水害防止、保健休養などの機能別に金額換算して積み上げたら、当時でなんと三十一兆円になったということがあった。 この数字は、現在もあまり変わらないのではないかと思う。
その中でも注目すべきは、木材生産額は4パーセントにすぎないということである。 森林の目に見えない効用は、それほど大きいということだ。
今、就職難の学生が多いようである。 国は本腰を入れて森林や、山林の保護のための方策を真剣に考えたらどうだろうか。 森林や山林の樹木の手入れを徹底的にやったら、美しい自然がよみがえるばかり、国産の材木を少々価格が高くても、みんなで使うという文化を取り戻したいものだ。 就職難とスギ花粉の防止にもなる。
いろいろな点を含めて森林や林業を評価しないと、それこそ木を見て森を見ないことになる。

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