日銀総裁の発言

日本銀行の黒田東彦総裁による「家計の値上げ許容度は高まっている」発言が猛批判にさらされている。確かに資源高や食料品などの値上げが相次いでいる。しかしながら、アメリカの物価上昇と比べると全く問題になる数字ではない。マスコミはじめ一般の人達が非難しているのは、見当違いの非難であり、感情論でしかないように思う。黒田氏は統計的な事実を言っているのであり、一般の人達の家計は、コロナ禍の行動制限化で、貯蓄が増えているのである。黒田氏は日本全体の家計を統計上、こうだと言っているだけである。問題は物価が上昇しているのに、賃金は下落の状況にあるのが問題なのではないのか。
国の財政が潤えば、公共事業も増えるし、国民の収入が上がれば、消費も増える。結果、製造業の業績が上がり、サービス業やレジャー産業、不動産と雇用の裾野は大きく広がっていくと考えられる。ところが、市場とは消費が増大し、店頭に物が溢れ返るようになると、特性や品質が一定化して個々の商品の差別化が難しくなる。ブランド力の高い一部の高級品はともかく、誰もが当たり前に買える消費財は、大抵の場合において価格競争が始まるものだ。
技術の発達した今日では、どこのメーカーの製品でも、性能に大した違いはない。ましてや製品が陳腐化してしまうまでのサイクルも、加速度的に短くなっている。個人の家庭にある鍋、釜はもとより、テレビを始めとする電化製品の数々。特定のブランドに思い入れのある人も中にはいるだろうと思うが、大抵の場合、一円でも安いものを買いたいと思うのが、消費者心理というものだと思う。
製造業は、新製品を開発するに当たって、莫大な先行投資を行わなければならないことを宿命づけられている。したがって、市場に送り出した製品が、しかるべき数が売れ、投資した金額に見合う利益を生まないことには、経営が立ち行かなくなる。今の市場はすぐに価格競争に巻き込まれ、消費者もそれを待っているものだから、利幅は小さいものになってしまう。したがって開発にかかる先行投資が下げられないのなら、原材料や部品の調達費用をより安く抑え、さらに最大のコストである人件費を削減するしかない。そして、従来高かった人件費を下げるわけにはいきませんから、製造業は人件費の安い場所へと生産拠点を移すようになる。ここ二十年、日本人の平均給与は、減少傾向にあるのは、家電製品や日用品の多くが、製造の拠点が日本から出て行ってしまっている証拠である。
従って人件費を上げるためには、消費者の行動を変えることが必要だ。消費者の購買動機が同じ品質なら安い方に向く限り、それを叶えずして企業の存続はありえない。安い製品を作るには、原材料の調達から始まって、そこに携わる人間のコストをいかに安く抑えるかに向かわざるを得ない。そのためには消費者の行動を変えるしかない。要するに価格競争に余念のない量販店で物を買わない。日本企業のものであっても、外国で生産された製品は買わない。日本で作られた製品を値札通りの価格で文句を言わず買う。そして企業が利益を上げ、従業員の給料を上げるという循環を作るしかないと思うが、どうだろうか。