勝負をツキで語るな

ずいぶん昔の話だが、スポーツの世界で、ついているとか、ツキがないとかが語られると、鮮明に思い出すラクビー試合がある。それについての誰だったかの談話だが、長い間、自分の気持ちの中の奥深いところにしまっていた。
それはラクビーの日本選手権の試合で、早大は劇的な逆転トライで、二年連続日本一の栄冠に輝いたときのことである。早大は社会人優勝の相手に対して、ノーサイド寸前にA選手のパントをB選手が受けて飛び込んだプレーについて、早稲田学報に乗っていた文章が感動的だった。「・・・・あのトライがあまりに劇的であり、瞬間の出来事であったため、幸運という事だけが大きく見る人の心をとらえ、その陰に隠れた努力とか実力とか言ったものが、あまりに過小評価されてしまったのも致し方ないのかも知れない。・・・・・あの一見ラッキーに見えるバウンドには、早稲田ラクビーの一年間の練習の積み重ねが凝縮されていたといってよい。あのような攻撃パターンを、春から何度となく練習し、みんなが身に着けていたのである。・・・たったあの一度の場面のために、一年間練習したといっても過言ではあるまい。結局、その努力が報いられて、勝利をつかむことができたのである。・・・人間には、平等に、いろいろな形でチャンスが与えられる。それがどのような結果を生むかは、その人の努力とそなわった力によって大きく変わってしまうのであろう・・・」
その文章に接して以来、私は勝負の場にあるものが、軽々しく運、不運を口にすべきではないと固く思っている。

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