排除本能

渋野日向子選手が、アメリカ遠征から帰国した。残念な結果だったが、大きく前進したと述べている。その言や善しである。「天才はすなわち忍耐である」とフランスの博物学者ビゥフォンが言っているが、渋野選手は大変な努力家だそうだ。プレーが終わってからも一人遅くまで、パターの練習をしているのでも有名だ。
私の友人が「人間はいいものを知ると、それより劣ったものを本能が排除する」と言ってたことがある。友人は、学生の頃、造り酒屋に下宿していた。主人が「これはいい酒だよ」といって飲ませてくれる。度重なるうちに、それまで酒なら何でもいいという無差別流だったのが、自然に酒の基準のようなものが分かってきて、上等といわれる酒以外は飲みたくなくなった。いい酒だけを飲むという単純なことの繰り返しが、知らないうちに酒の良し悪しを識別する本能を育てたという事のようだ。
これなどは嗜好が進むにつれて育ってくるのだから、第二の本能といえようか。要するに「不味いものは、無意識のうちに避ける」、排除本能といったものだと思う。本物の骨董屋になるためには、一流のものだけを見ろという。駄物ばかり見て育てば、排除本能の芽は出ないと云われている。
従って、何かに傑出しようと思うなら、出来るだけ本場の舞台を踏み、一流を目で見たり肌で感じたりして排除本能を磨き上げなければならない。日本のゴルフアーが世界的になりたいと望むなら、出来るだけ本場の舞台、米国や英国で経験を積むことが不可欠といえよう。岡本選手はアメリカで賞金女王になった。宮里藍選手も海外で何回も優勝している。畑岡選手も強くなっている。世界の技術に開眼したという事だろうと思う。排除本能が知らぬ間に芽生え、育ち、より高い次元への足掛かりとなった。排除本能を別の観点から言うと善悪を区別する「識別本能」といえる。本能的に識別できれば、本能的にいいものだけを取り出し吸収するという選択能力が育つ。この選択能力が欠けていれば、たとえ本場の舞台を踏んでも得るところは無に近い。天才渋野選手を期待する所以である。

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