人間の尊厳について

「健康寿命」とは、何不自由なく体を動かし、認知症もなく介護を必要とせず、人間らしい生活ができる期間の事である。 いつだったか厚労省発表の健康寿命は、男70・42歳、女73・62歳。 一方平均寿命は、男79・55歳、女86・30歳で、両者の差は男9・13年、女12・68年。 実に10年間もの医療や介護が必要な生活は、医療・介護費等の負担増と共に、人間としての尊厳を維持し最期が迎えられないということになる。 これは当事者にとっては極めて重大な問題であり、健康で何不自由なく人生を送っている人には、日常的に気がつかないものなのでもある。 が、今回大したことではなかったのだが、生まれて初めて入院生活なるものを体験した。 腕に点滴の管が入っているために、歩行するのも難儀だし、ましてやトイレに行くのも大変だ。 風呂も入れないので、毎日洗っていた髪の毛が痒くなる。 背中を拭くったって、看護師の手を借りなければ何もできない。 そんな生活を2~3日経験すると、つくづくいやになる。 人間の尊厳を保つことの難しさに絶望するのである。
しかしながら、そうも言ってはおられないのが人生。 「倒れざるをもって尊しとせず、倒れて尚、立ち上がるをもって尊し」。 今はやりの言い方では、「レジリエンス(逆境力・折れない心)」だ。 現在までの成功も失敗も、常に大いに反省し、奢ることなく前向きに先を目指し、健康寿命維持に技を磨く努力が、己の尊厳の維持に効果的であるとわかった。 さらに重要なのは、70歳を過ぎて尚、まだ三欲(権力、金銭、名誉)に未練を残し晩節を汚す人も多い。これ等は最悪の尊厳を汚す老人と言えるであろう。

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